孫育てへの関わり方で意見が合わない時:息子夫婦との間に信頼を保つコミュニケーション
孫は、家族にとってかけがえのない宝です。孫の成長を見守り、関わることは、多くの方にとって大きな喜びであり、人生の充実感をもたらしてくれます。一方で、孫育てへの関わり方や考え方において、ご自身の経験と息子さん夫婦の現在の考え方に違いが生じ、意見が合わないと感じることがあるかもしれません。
長年子育てを経験された世代にとって、ご自身の経験は貴重な知識や知恵の源泉です。しかし、時代と共に子育てに関する情報や考え方も変化しています。この変化への理解が不足していると、よかれと思って伝えたアドバイスが息子さん夫婦には受け入れられにくかったり、時には関係性の軋轢を生んでしまったりすることもあります。
ここでは、孫育てを巡る息子さん夫婦との意見の相違に、どのように向き合い、良好な信頼関係を保ちながら関わっていくかについて、具体的なコミュニケーションのステップと心構えをご紹介します。
なぜ孫育てで意見の相違が生まれるのか
孫育てに関する意見の相違は、主に以下のような要因によって生じることが考えられます。
- 世代間の価値観や情報源の違い: ご自身が子育てをされていた頃とは、育児に関する情報や考え方が大きく変化しています。インターネットやSNSを通じて最新の情報を得ている息子さん夫婦と、ご自身の経験に基づいた考え方との間にずれが生じやすいことがあります。
- 子育ての主体は親であるという認識の違い: 孫の子育ての最終的な責任と決定権は、息子さん夫婦にあります。祖父母として良かれと思ってしたことが、彼らの子育て方針と異なったり、干渉と感じられたりする場合に、意見の対立が生じます。
- コミュニケーション不足や伝え方の問題: お互いの考えや気持ちを十分に伝え合えていなかったり、伝え方が一方的になったりすることで、誤解や不満が募ることがあります。
これらの違いは自然なことであり、必ずしもどちらかが間違っているわけではありません。大切なのは、違いがあることを認め、尊重し合いながら、孫にとって最も良い形を一緒に考えていく姿勢です。
意見が合わないと感じた時の具体的なコミュニケーションステップ
息子さん夫婦と孫育てについて意見が合わないと感じた際に、関係性を損なわずに話し合うための具体的なステップをご紹介します。
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まずは相手の考えを「聴く」ことに徹する: 感情的になる前に、まずは息子さん夫婦がなぜそのように考えているのかを理解しようと努めてください。彼らの言葉に耳を傾け、話を遮らずに最後まで聞きます。この際、「こうあるべき」「私の時代はこうだった」といったご自身の考えは一旦脇に置き、相手の立場や考えを「理解すること」に集中することが重要です。
- 事例: 離乳食の開始時期について、ご自身の経験より遅い時期を考えている息子さん夫婦に対し、「もっと早く始めて大丈夫なのに」と感じたとします。すぐに反論するのではなく、「なぜその時期が良いと考えているの?」「何か参考にしている情報はありますか?」などと、まずは彼らの考えの根拠を尋ね、丁寧に聴いてみてください。
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ご自身の経験や考えを穏やかに伝える(「I(アイ)メッセージ」で): 相手の考えを十分に聴いた上で、ご自身の経験や考えを伝える場合は、「あなたは~すべきだ」という「You(ユー)メッセージ」ではなく、「私は~と思います」「私の経験では~でした」という「I(アイ)メッセージ」を使うように心がけてください。これは、相手を非難するのではなく、自分の感情や考えを率直に伝えるコミュニケーション技法です。
- 例:「あなたたちのやり方は間違っている」ではなく、「私は〇〇だったので、△△というやり方もあるかと思っていました。」
- 例:「なんで〇〇しないの?」ではなく、「〇〇すると、私は△△になると思うのですが、どう思いますか?」
ご自身の豊富な経験からくる知識は大変貴重ですが、それを「正解」として押し付けるのではなく、あくまで一つの選択肢や情報として穏やかに提供する姿勢が大切です。
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共通の目標を確認し、歩み寄りの姿勢を示す: お互いの意見を伝え合った後は、「孫の健やかな成長」という共通の目標を再確認します。そして、お互いの考えの中で、孫にとって最も良い方法は何なのかを一緒に検討します。この時、ご自身の経験や知識を押し通すのではなく、息子さん夫婦の考え方を尊重し、歩み寄りの姿勢を示すことが信頼関係の維持につながります。
- 事例: 昔ながらの方法で孫をあやしたい祖父母と、安全性を考慮して特定の抱き方や道具を使いたい息子夫婦がいたとします。お互いの意見を伝え合った上で、「孫の安全」という共通目標を確認し、一部は従来のやり方を取り入れつつ、安全性に関する息子夫婦の意見も尊重し、最新の育児グッズなども受け入れるなど、妥協点を見つける話し合いをします。
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適切な距離感を保ち、決定権を尊重する: 祖父母としてサポートする立場を忘れず、子育ての主役はあくまで息子さん夫婦であることを尊重することが何よりも重要です。彼らが下した決定に対して、たとえご自身の考えと異なっていても、基本的にはそれを尊重し、過度な干渉は避けるようにします。アドバイスを求められた時には誠実に答えますが、求められていない時には見守る姿勢を大切にしてください。
信頼関係を維持するための心構え
意見の相違を乗り越え、息子さん夫婦との間に良好な信頼関係を築き維持するためには、日頃からの心構えが重要です。
- 感謝の気持ちを伝える: 孫に会わせてくれること、子育てを頑張っていることなど、息子さん夫婦への感謝の気持ちを折に触れて伝えてください。感謝は関係性を円滑にする潤滑油となります。
- 変化を受け入れる柔軟性: ご自身の経験や知識に固執せず、新しい子育ての情報や息子さん夫婦の考え方を学ぶ姿勢を持つことも大切です。時代と共に変化する子育てのあり方に対して柔軟であることは、より良い関係性を築く上で役立ちます。
- 完璧を目指さない: 祖父母として完璧である必要はありません。時には意見がぶつかることがあっても、それは自然なことです。大切なのは、対立を恐れず、お互いを尊重しながら話し合うプロセスです。
まとめ
孫育てを巡る意見の相違は、世代や価値観の違いから生じる自然な現象です。しかし、その違いにどう向き合うかによって、息子さん夫婦との関係性は大きく変わってきます。
感情的にならずに相手の言葉に丁寧に耳を傾け、ご自身の経験を押し付けず穏やかに伝えること、そして何よりも息子さん夫婦の決定権と立場を尊重し、適切な距離感を保つことが、良好な信頼関係を築き、維持するための鍵となります。
ご自身の豊富な人生経験は、孫の成長を見守る上で大きな力となりますが、その力を息子さん夫婦の子育てを「サポートする」という形で発揮することが、家族全体の円満な関係性につながるでしょう。この記事が、皆様の孫育てと息子さん夫婦との関係性構築の一助となれば幸いです。